今回は高卒認定試験物理基礎の平成28年度第2回の大問1、大問2についてのポイント解説をしていきます。
問題や解答については文部科学省のHPにあるものを参照してください。
(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiken/kakomon/1379306.htm)
・どのような知識が必要か
・どう解くのがよいのか
といった視点からそれぞれの問題について説明していきます。
大問1
大問1は平均の速さ、相対速度、等加速度直線運動、落体の運動に関する出題がありました。
問1
問1は平均の速度に関する問題です。
平均の速さ\(v\)は移動距離を\(x\)、経過時間を\(t\)とすると
で表されます。
ランナーが移動した距離は\(360\ \rm m\)、経過時間は\(30+45=75\ \rm s\)であるので
\[v=\frac{360}{75}=4.8\ \rm m/s\]
と求まります。
ここで、注意点が1つあります。
それは、前半の区間と後半の区間の平均の速さを求め、その平均をとるという計算をしてはいけないということです。
どいうことかというと、前半の区間の平均の速さを\(v_1\)とすると
\[v_1=\frac{180}{30}=6.0\ \rm m/s\]
後半の区間の平均の速さを\(v_2\)とすると
\[v_2=\frac{180}{45}=4.0\ \rm m/s\]
前半の区間と後半の区間の平均をとって
\[\frac{6.0+4.0}{2}=5.0\ \rm m/s\]
というように計算をするのは誤りです。
なぜかというと、平均の速さを求めている時点ですでに平均をとっています。
そのため、それぞれの平均の速さの平均をとってしまうと、平均の平均という何を求めているのかわからない計算になってしまうので注意してください。
問2
問2は相対速度の問題です。
相対速度はAの速度を\(v_A\)、Bの速度を\(v_B\)とすると、AからみたBの相対速度は観測者の速度を引けばよいので
と表されます。
求めたいのはAに対するBの相対速度、つまりAからみたBの相対速度です。
よって、Bの速度からAの速度を引けばOKです。
西向きを正とするとAに対するBの相対速度は
\[v=7.5-(-1.2)=8.7\ \rm m/s\]
となります。西向きを正としているので、Aの速度は東向きなので、負で式に代入します。また、計算結果が正で求まったので、向きは西向きです。
東向きを正としても問題ありません。
この場合、Aは正、Bは西向きなので、負として代入します。
\[v=-7.5-1.2=-8.7\ \rm m/s\]
となります。
計算結果が負として求まったということは、正の向きに決めた方向と逆向きということになりますので、向きは西向きとわかります。
問3
問3は等加速度直線運動に関する問題です。
初速度と加速度、変位がわかっているので、等加速度直線運動の
を用いて時刻を求めることができます。
\(v_0=3.0\ \rm m/s\)、\(a=2.0\ \rm m/s^2\)、\(x_0=0\ \rm m\)、\(x=18\ \rm m\)であるので
\[18=0+3.0t+\frac{1}{2}\times2.0\times t^2\]
であり、\(t\)の2次方程式になります。
\(t>0\)であることに注意してこれを解くと
\begin{align}
18&=0+3.0t+\frac{1}{2}\times2.0\times t^2\\
t^2+3.0t-18&=0\\
(t-3)(t+6)&=0\\
t&=3,-6
\end{align}
となり、\(t=3.0\ \rm s\)と求まります。
問4
問4は落体の運動に関する問題です。
水平投射した場合の水平方向と鉛直方向の運動についてです。
水平方向については物体は力を受けません。
よって、水平方向に与えられた初速度のまま運動するので、等速直線運動をします。
物体は鉛直下向きに重力のみを受けて運動するので、下向きを正とすると、鉛直方向は加速度\(g\)の等加速度直線運動となります。
大問2
大問2は運動の法則、摩擦のある運動、ばね、浮力に関する出題がありました。
問1(1)
問1(1)は摩擦のない面での運動の問題です。
物体にはたらく力を考えると、鉛直方向は重力と垂直抗力がつりあっています。
水平方向は、問題文の図にあるように右向きに力がはたらいています。
この水平方向の力によって物体に加速度が生じています。
運動方程式\(ma=F\)より、\(m=5.0\ \rm kg\)、\(a=0.80\ \rm m/s^2\)を代入して
\[F=5.0\times0.80=4.0\ \rm N\]
と求まります。
問1(2)
問1(2)は摩擦があります。
ここでポイントとなるのは、物体は運動しているのではたらく摩擦力は動摩擦力であることと、物体を等速度で運動させているということです。
動摩擦力\(f\)は動摩擦係数をμ’、垂直抗力を\(N\)とすると
\[f=μ’N\]
で表されます。
また、等速度で運動しているということは物体は等速直線運動をしていることになります。
速度は向きと大きさをもつベクトル量であり、等速度、つまり速度が等しいということは大きさと向きも等しいということです。
よって、向きが変わらないということは一直線上を運動し、速度の大きさも変わらないことから等速直線運動ということがわかります。
等速直線運動しているということは、物体にはたらく力がつりあっているので、鉛直方向の重力と垂直抗力はもちろん、水平方向の物体を引く力と動摩擦力もつりあっているということがわかります。
よって、物体を引く力の大きさが\(0.49\ \rm N\)であるので、動摩擦力の大きさも\(0.49\ \rm N\)となります。
鉛直方向の力のつりあいより
\[N=mg=5.0\times9.8\]
であるので、動摩擦力の式に代入して動摩擦係数を求めると
\begin{align}
0.49&=μ’\times5.0\times9.8\\
μ’&=\frac{0.49}{49}\\
&=0.010
\end{align}
と求まります。
問2
問2はばねに関する問題です。
ばねの弾性力の大きさ\(F\)とばねの伸び(縮み)\(x\)は比例し、その比例定数を\(k\)とすると
となります。
比例定数\(k\)[N/m]はばね定数といい、ばねの伸びやすさ(縮みやすさ)を表します。
ばね定数が\(k\)ということは、ばねを\(1\ \rm m\)伸ばす(縮める)のに\(k\)[N]の力が必要とも読み取ることができます。
ばね定数が大きいほど大きな力が必要になる、つまり伸びにくい(縮みにくい)ばねとなります。
2つのばねはどちらも同じ自然長、同じばね定数です。
おもりをつり下げた時の、ばねの伸びはどちらも等しく、その伸びを\(x\)[m]とすると、ばね1つにはたらく弾性力の大きさは、フックの法則より
\[F=200x\]
となります。
ばねが2個あるので、この弾性力の2倍の大きさとおもりにはたらく重力がつりあいます。
よって
\begin{align}
4.0\times9.8&=200x\times2\\
x&=\frac{4.0\times9.8}{400}\\
&=0.010\times9.8\\
&=0.098\ \rm m
\end{align}
となります。
ここで注意が必要です。
求めた伸びの単位は[m]です。
答えは[cm]で求める必要があるので、\(0.098\ \rm m\)を[cm]に直します。
よって、\(9.8\ \rm cm\)となります。
問3
問3は浮力に関する問題です。
浮力の大きさは、
という、アルキメデスの原理が成立します。
今回は、流体が水であるので、排除した水の重さに等しい大きさの浮力が物体にはたらきます。
それでは問題について考えていきましょう。
まずは、円柱形の金属と木にはたらく力を考えます。
すると、それぞれ重力と浮力を受けます。
質量が与えられていないので、密度と体積から求める必要があります。
質量=密度×体積であるので円柱形の金属の質量は
\[1.0\times1.0\times8.0=8.0\ \rm [g]\]
求まった質量の単位は[g]ですので、[kg]に直して\(8.0\times10^{-3}\ \rm [kg]\)となります。
よって、受ける重力の大きさは
\[8.0\times10^{-3}g\ \rm [N]\]
となります。
浮力の大きさは、金属が排除する体積が\(1.0\ \rm cm^3\)です。
それと同じ体積の水の質量は
\[1.0\times1.0\ \rm [g]\]
であり、単位を[kg]に直すと\(1.0\times10^{-3}\ kg\)となるので、
\[1.0\times10^{-3}g\ \rm [N]\]
となります。
同様にして円柱形の木についても考えます。
重力の大きさは
\[1.0\times30\times0.40\times10{-3}g=12\times10{-3}g\ \rm [N]\]
となります。
円柱の木にはたらく浮力の大きさには注意です。
木の円柱が排除した水の重さがはたらくので、木の円柱が排除するのは沈んでいる部分である\(1.0\times(30-x)\ \rm [cm^3]\)です。
よって
\[1.0\times(30-x)\times1.0\times10^{-3}\times g=(30-x)\times10^{-3}g\ \rm [N]\]
です。
円柱形の金属と木は静止しているので、力のつりあいより
\[8.0\times10^{-3}g+12\times10{-3}g=1.0\times10^{-3}g+(30-x)\times10^{-3}g\]
この式を\(x\)について解けば水面上に浮いて現れる部分の長さが求まります。
\(10^{-3}g\)が各項に共通ですので消してから計算すると
\begin{align}
8.0+12&=1.0+(30-x)\\
20&=31+x\\
x&=11\ \rm cm
\end{align}
となります。
まとめ
今回はここまでです。
平成28年度2回目ポイント解説その2はこちらから。

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