今回は高卒認定試験物理基礎の平成28年度第2回のポイント解説の続きをしていきます。
大問3、大問4についてはこちらの記事から。

大問5
大問5は抵抗、電気回路、電磁誘導、電磁波に関する出題がありました。
問1
問1は抵抗に関する問題です。
同じ材質の抵抗の断面積と長さが異なる場合の抵抗値について比較する問題です。
材質が同じということは抵抗率が同じということです。
そして、抵抗が同じ材質であるとき、抵抗は長さに比例し、断面積に反比例します。
抵抗率をρ[Ω・m]、長さを\(l\ \rm [m]\)、断面積を\(S\ \rm [m^2]\)とすると、抵抗\(R\)[Ω]は
と表されます。
つまり、長さが長くなるほど、断面積が小さくなるほど抵抗の値は大きくなります。
では、与えられた図の抵抗を抵抗率をρとしてそれぞれ表してみます。
\[R_1=ρ\frac{L}{S}\]
\[R_2=ρ\frac{2L}{\frac{S}{2}}=4ρ\frac{L}{S}\]
\[R_3=ρ\frac{4L}{\frac{S}{4}}=16ρ\frac{L}{S}\]
となります。
\(R_1\)を基準として\(R_2\)、\(R_3\)を表してみると
\[R_2=4R_1\]
\[R_3=16R_1\]
であるので、大小関係は\(R_1<R_2<R_3\)となります。
問2
問2は電気回路に関する問題です。
電力が最も大きいものを選択します。
まず、電力\(P\)は以下の式で表されました。
ここで、与えられている図の4つの回路において、それぞれの抵抗及び電池はすべて同じものを用いているので、\(R\)と\(V\)を用いて電力を表せばよいことがわかります。
したがって
\[P=\frac{V^2}{R}\]
の式を用いて各回路の電力を求めていきます。
各抵抗で消費する電力を1つ1つ求めてもよいのですが、そうすると特に④が大変になります。
そこで、②〜④(もしくは③、④)については抵抗を合成して電力を求めるとよいでしょう。
それでは①の回路から電力を求めていきます。
電力を\(P_1\)とすると
\[P_1=\frac{V^2}{R}\]
です。これを基準として他の回路の電力を比較していきましょう。
②については、並列接続された抵抗の合成抵抗は
\begin{align}
\frac{1}{R}&=\frac{1}{R_1}+\frac{1}{R_2}\\
R&=\frac{R_1R_2}{R_1+R_2}
\end{align}
と表されるので、②の回路の合成抵抗\(R’\)は
\[R’=\frac{R\times R}{R+R}=\frac{R^2}{2R}=\frac{R}{2}\]
であり、電力を\(P_2\)とすると
\[P_2=\frac{V^2}{\frac{R}{2}}=\frac{2V^2}{R}\]
となります。
\(P_1\)を用いて表すと
\[P_2=2P_1\]
となります。
もちろん、抵抗を合成しなくても、並列回路の各抵抗にかかる電圧が等しいことから、それれぞれの抵抗での消費電力を出して足してもOKです。
③について、直列に接続された抵抗の合成抵抗は
と表されるので、③の回路の合成抵抗\(R”\)は
\[R”=R+R=2R\]
であり、電力を\(P_3\)とすると
\[P_3=\frac{V^2}{2R}\]
となるので、\(P_1\)を用いて表すと
\[P_3=\frac{1}{2}P_1\]
となります。
最後に④についてです。
まずは並列接続部分を合成すると、直列接続になり、直列接続部分を合成しましょう(下図参照)。
並列部分の合成抵抗を\(r\)とすると
\[r=\frac{R}{2}\]
であり、直列部分を合成すると、合成抵抗\(r’\)は
\[r’=R+\frac{R}{2}=\frac{3R}{2}\]
であるので、電力を\(P_4\)とすると
\[P_4=\frac{V^2}{\frac{3R}{2}}=\frac{2V^2}{3R}\]
となり、\(P_1\)を用いて表すと
\[P_4=\frac{2}{3}P_1\]
です。
よって、電力が最も大きいのは②の回路となります。
問3
問3は電磁誘導に関する問題です。
各選択肢を確認していきましょう。
①については、磁石を遠ざけたときと、近づけたときとで、内部の磁場の変化が異なるので誘導電流の向きも異なり、一定ではないので誤りです。
②については、電磁誘導による起電力(誘導起電力)は、単位時間あたりの磁力線の変化が大きいほど、また、コイルの巻数が大きいほど、大きくなることから、巻数に関係ないというのは誤りです。
③については、遠ざけるか、近づけるかで変わるのは誘導起電力の向きなので誤りです。
最後の④が正しい記述となります。
問4
電磁波に関する問題です。
\(0.1\ \rm mm=1\times10^{-4}\ \rm m\)以上の電磁波を電波といい、このマイクロ波の波長は可視光線の波長よりも長いです。
よって、アは電波、イは長いとなります。
電磁波については教科書等の分類表についてもよくチェックしておきましょう。
まとめ
例年通り力学からの出題が多いものとなりました。
一方、エネルギーの利用に関する問題や原子に関する問題が出題されませんでした。
波については自由端反射、固定端反射による反射波の波形を選択する問題が出題されており、作図の仕方も理解しておく必要がありました。
用語や性質、基本的な式だけではなく作図等についてもよく確認しておくようにしてください。
今回はここまでとなります。
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