今回は高卒認定試験物理基礎の平成29年度第1回の大問1、大問2についてのポイント解説をしていきます。
問題や解答については文部科学省のHPにあるものを参照してください。
(http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiken/kakomon/1389261.htm)
・どのような知識が必要か
・どう解くのがよいのか
といった視点からそれぞれの問題について説明していきます。
大問1
大問1は等加速度直線運動、速度の合成、鉛直投げ上げ運動、自由落下、相対速度に関する問題が出題されました。
問1
等加速度直線運動の問題です。
\(v-t\)図が与えられています。
・傾きは加速度を表す
・グラフと\(t\)軸が囲む面積は変位を表す
選択肢から運動について正しく記述しているものを選びます。
まず①についてです。
\(0\)〜\(1\)[s]の\(v-t\)図を見てみると傾きが一定の直線となります。
\(v-t\)図の傾きは加速度を表しているので、加速度一定ということとなり、正しい記述となります。
答えの選択肢がわかりましたが、他の選択肢についても確認しておきます。
②についてです。
\(1\)〜\(3\)[s]の\(v-t\)図を見てみると、横軸に平行な直線となっています。
これは速度が\(12\)[m/s]で一定となって運動していることを表しているので、物体は静止していないので誤りです。
傾きがないので物体が静止しているように思ってしまう人もいるかもしれませんが、あくまでその時の速度が変化していないだけということに注意が必要です。
③についてです。
速度が正の間、物体は\(x\)軸の正方向に進んでいます。
\(x\)軸の負方向に物体が進むには速度が負である必要がありますが、\(v-t\)図を見てみると速度は負にならないので誤りです。
\(3\)[s]〜\(5\)[s]の間は傾きが負になっています。
何度も確認しますが、\(v-t\)図の傾きは加速度を表しています。
つまり、傾きが負ということは加速度が負であるので、物体は減速しています。
しかし、減速をしているだけで、\(v-t\)図からもわかるように速度は負になっていないことに注意して下さい。
最後に④についてです。
物体が原点に戻るには物体が負方向に進む必要があります。
しかし、③でも確認したように、速度が負になることはないので誤りです。
問2
速度の合成に関する問題です。
岸から見た時、A、Bは川の流れと合わさった速度で運動しているように見えます。
物体の速度と川の流れの速度とを合成して、それぞれがどのような速度で運動しているかをまずは計算します。
川上から川下への向きを正とし、求める川の流れの速さを\(v\)とします。
・物体Aについて
物体Aと川の流れの向きは同じであるので、合成速度は
\[
4.5+v\ \ \ \mbox{[m/s]}
\]
となります。
・物体Bについて
物体Bは川下から川上へと流れるので物体Bの速度は\(-3.0\)[m/s]です。
よって、川の流れと物体Bの合成速度は
\[
-4.5+v\ \ \ \mbox{[m/s]}
\]
となります。
この2つの速さの差が3.0[m/s]であるので、それぞれの絶対値の差をとります。
\[
|4.5+v|-|-4.5+v|=3.0
\]
ここで、物体Bが川下から川上の向きへと進んでいることから、|\(-4.5\)|>|\(v\)|であることがわかります。
※川の流れの方が速かった場合、Bは川上へと進むことができないですね。
よって|\(-4.5+v\)|<\(0\)であるので
\[
\begin{align}
|4.5+v|-|-4.5+v|&=3.0\\
4.5+v-\{-(-4.5+v)\}&=3.0\\
4.5+v-(4.5-v)&=3.0\\
4.5+v-4.5+v&=3.0\\
2v&=3.0\\
v&=1.5
\end{align}
\]
となるので、川の流れの速さは\(1.5\)[m/s]となります。
問3
問3は鉛直投げ上げ運動と自由落下、相対速度の問題です。
(1)
まずは、鉛直投げ上げ運動についてです。
最高点に達する時間を求めます。
ポイントは
ということをおさえておきましょう。
まず、鉛直上向きを正方向として小球にはたらく力をかき、運動方程式をたてます。
小球の質量を\(m\)、加速度を\(a\)とすると、鉛直下向きに重力のみはたらくので運動方程式は
\[
ma=-mg
\]
よって、加速度は
\[
a=-g
\]
となります。
すると、小球の速度\(v\)は
\[
v=4.9-gt\ \ \ \mbox{①}
\]
です。
あとは、最高点での速度が\(0\)であることから①式に\(v=0\)を代入して\(t\)について解けばOKです。
\(g\)の値については問題文に与えられています。
(2)
次に相対速度の問題です。
相対速度について確認しておくと物体Aに対する物体Bの相対速度\(v_{AB}\)は
v_{AB}=v_B-v_A
\]
と表されました。
「〜に対する」は「〜を基準とした」と考え、他方の速度から基準としている方の速度を引きます。
それでは問題について考えていきます。
小球Aが最高点に達した時に小球Bを自由落下させます。
このときの小球Bに対する相対速度の時間変化を考える問題です。
自由落下をさせた時刻を\(0\)[s]とするので、それ以降の運動についてそれぞれ考えていきます。
まず、小球Aについててです。
最高点に到達したときに速度が0になり、それ以降は加速度\(-g\)で落下していくので\(v_A=-gt\)となります。
また、小球Bは自由落下であるので\(v_B=-gt\)となります。
よって、小球Bに対する小球Aの相対速度\(v_BA\)は
\[
\begin{align}
v_{BA}&=v_A-v_B\\
&=-gt-(-gt)\\
&=-gt+gt\\
&=0
\end{align}
\]
となります。
相対速度の時間変化ですが、時間が変化しても相対速度は変わらず0であることが求めた結果からわかるので、これに適したグラフを選べばOKです。
大問2
大問2は運動方程式、圧力、力のつりあいに関する問題が出題されました。
問1
運動方程式の問題です。
物体の加速度を求めます。
まずは物体に着目して力を図示してみます。
重力は斜面方向と斜面に垂直方向に分解します。
※はたらく力をわかりやすくするために、物体と斜面を離してかいてあります。
あとは、斜面方向下向きを\(x\)方向の正として運動方程式を立てればOKです。
問2
圧力に関する問題です。
圧力は単位面積当たりにかかる力のことでした。
ピストンAにのせる物体の質量を\(m_A\)、ピストンBにのせる物体の質量を\(m_B\)とします。
ピストンAにかかる圧力\(P_A\)は
\[
P_A=\frac{m_Ag}{3}
\]
であり、ピストンBにかかる圧力\(P_B\)は
\[
P_B=\frac{m_Bg}{12}
\]
水面の高さを同じに保つにはどちらの圧力も等しくなればよいので
\[
\begin{align}
P_A&=P_B\\ \\
\frac{m_Ag}{3}&=\frac{m_Bg}{12}\\ \\
\frac{m_A}{m_B}&=\frac{3}{12}\\ \\
m_A&=\frac{1}{4}m_B\\ \\
m_B&=4m_A
\end{align}
\]
となります。
つまり、ピストンBのおもりはピストンAのおもりの\(4\)倍であるということなので、ピストンAのおもりの質量を4倍すればOKです。
問3
力のつりあいに関する問題です。
力を正確にかけるかがポイントです。
(1)
鉛直上向きを正として物体にはたらく力を図示してみます。
物体の質量を\(m\)、ばねの伸びを\(d\)とします。
※物体にはたらく力をわかりやすくするためにばねを点線で表しています。
ばねが伸びることで縮む向き、つまり鉛直上向きに力がはたらいています。
静止しているということから、このばねが物体を引っ張り、物体にはたらく重力とつりあっています。
よって
\[
mg=kd
\]
問題文より\(k=49\)[N/m]、\(d=0.10\)[m]、\(g=9.8\)[m/\(\rm s^2\)]であるので、それぞれを代入して\(m\)について解けば物体の質量が求まります。
ここで、ばねの伸びを\(d=0.10\)[m]とメートルに直しています。
これは、ばね定数が\(1\)[m]伸びた(縮んだ)ときにかかる力であるので与えられている伸びをメートルに直す必要があるからです。
(2)
物体にはたらく重力が何の力とつりあいの関係で、何の力と作用反作用の関係にあるかを答える問題です。
力のつりあいは着目する1物体についての関係式、作用反作用は異なる2物体間での関係式です。
つまり、重力と力のつりあいの関係にあるのは(1)で確認したようにばねが物体を引く力です。
では、物体にはたらく重力と作用反作用の関係にあるのはどのような力かというと、重力は「地球が物体を」引く力です。
作用反作用を考える時はこの主語と目的語を入れ替えた関係にあるので「物体が地球を」引く力となります。
この作用反作用と力のつりあいは間違えやすい部分なので注意して下さい。
以下の記事でも作用反作用について説明しているので参考にしてみて下さい。

まとめ
今回はここまでです。
平成29年度1回目ポイント解説その2はこちらから。

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