今回は高卒認定試験物理基礎の平成29年度第2回の大問1、大問2についてのポイント解説をしていきます。
問題や解答については文部科学省のHPにあるものを参照してください。
(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiken/kakomon/1398420.htm)
・どのような知識が必要か
・どう解くのがよいのか
といった視点からそれぞれの問題について説明していきます。
大問1
大問1は平均の速さ、合成速度、鉛直投げ上げ運動に関する出題がありました。
問1
問1は平均の速さの問題です。
平均の速さ\(v\)は移動距離を\(x\)、経過時間を\(t\)とすると
で求めることができました。
よって、\(4.2\ \rm m\)を\(3\ \rm s\)で移動しているので、平均の速さ\(v\)は
\[v=\frac{4.2}{3}=1.4\ \rm m/s\]
と求まります。
問2
問2は合成速度の問題です。
合成速度\(v\)は
で表されました。
川下から川上に向かう向きを正の向きとします。
すると、川を進む船の速度\(v\)は岸から観測している人から見て
\[v=3.5-1.5=2.0\ \rm m/s\]
で運動しているように見えます。
(川の流れは川上から川下、つまり定めた正の向きと逆向きなので負として式に代入します。)
よって、1分間移動する間にはじめの位置から進む距離は
\[2.0\times60=120\ \rm m\]
と求まります。
問3
問3は鉛直投げ上げ運動の問題です。
問3(1)
(1)は小球の時刻と速度の関係、つまり\(v-t\)図として適切なものを選びます。
物体は重力のみを受けるので、鉛直上向きを正とすると
\[ma=-mg\]
と運動方程式をたてることができ、加速度を求めると\(a=-g\)となります。
これより、小球の速度の式は\(v=v_0+at\)に代入して
\[v=4.9-gt\]
となります。
この式から\(t=0\)の時\(v=4.9\)、傾きが\(-g\)の直線のグラフということがわかります。
傾きが負なので右肩下がりのグラフとなります。
よって、適切なグラフは②となります。
問3(2)
(2)は小球が地面に達する時刻を求めます。
地面を\(x=0\ \rm m\)とすると、小球の初期位置は投げ出した位置である\(29.4\ \rm m\)となります。
よって、\(x=x_0+v_0t+\frac{1}{2}ax^2\)より、物体の位置は
\[x=29.4+4.9t-\frac{1}{2}\times9.8t^2=29.4+4.9t-4.9t^2\]
と表すことができます。
地面に達するとき、つまり\(x=0\)を代入して\(t\)(\(t>0\))について解きます。
\begin{align}
0&=29.4+4.9t-4.9t^2\\
t^2-t-6&=0\\
(t-3)(t+2)&=0\\
t=3,-2
\end{align}
となり、\(t>0\)なので\(t=3\)と求まります。
もちろん、投げ上げた位置を\(x=0\)として考えてもOKです。
小球の位置の式は
\[x=4.9t-\frac{1}{2}\times9.8t^2=4.9t-4.9t^2\]
となり、地面はそこから\(29.4\ \rm m\)下がった位置ですので、\(x=-29.4\)となります。
よって、
\[-29.4=4.9t-4.9t^2\]
という\(t\)の2次方程式を解けば、同じ答えを計算することができます。
大問2
大問2は運動の法則、浮力、力の分解に関する出題がありました。
問1
問1は摩擦のない面上に置かれた物体の運動の問題です。物体間には摩擦があるので注意が必要です。
板AとBが同じ加速度で右向きに動いたとあります。
つまり一体となって動いているということがわかります。
よって、板Bは板Aに対して滑っていないのではたらく摩擦力は静止摩擦力となります。
つぎに、この板Bにはたらく静止摩擦力の向きについてです。
板Bが右向きに加速しているということはその方向に力を受けていることになります。
ここで、板Bにはたらく力を考えてみると、鉛直方向については重力と垂直抗力です。
水平方向については、板Aからはたらく静止摩擦力のみになります。
鉛直方向については運動しないので力がつりあっています。
よって、この静止摩擦力によって板Bに加速度が生じていると考えることができます。
板Bが右向きに加速しているということは、静止摩擦力の向きも右向きとなります。
問2
問2は浮力の問題です。
質量が[g]で与えられているので[kg]に直しましょう。
ばねばかりに物体をつるして示す値が\(550\ \rm [g]=0.550\ \rm [kg]\)であったということは、物体にはたらく重力の大きさは\(0.550g\ \rm [N]\)となります。
これを水中に沈めると、示す値が\(450\ \rm [g]=0.450\ \rm [kg]\)、つまり重力の大きさが\(0.450g\ \rm [N]\)になったということは、この2つの重力の大きさの差だけ浮力がはたらいていることになります。
よって、重力加速度の大きさが\(9.8\ \rm m/s^2\)であるので
\[0.550g-0.450g=0.100g=0.100\times9.8=0.98\ \rm [N]\]
と求まります。
問3
問3は運動の法則の問題です。
物体にはたらく力を考えると鉛直方向については重力と垂直抗力がつりあっています。
水平方向についてはばねから受ける弾性力があり、この力によって物体に加速度が生じます。
ばねの伸びが自然長から\(0.15\ \rm\)で一定となるように力を加えており、その大きさはフックの法則より
\[F=0.40\times0.15=0.060\ \rm N\]
となります。つまり、物体に右向きで大きさ\(0.060\ \rm [N]\)の一定の力がはたらいているということです。
よって、運動方程式に代入して加速度を求めると
\begin{align}
0.50a&=0.060\\
a&=0.12\ \rm m/s^2
\end{align}
となります。
問4
問4は力の分解の問題です。
どのように分解するか指定されていることに注意です。
鉛直方向と水平方向に分解してあれば三角比を用いて簡単に計算することができますが、今回はそのように分解されていないので図形的な性質をつかって求めます。
力を分解すると以下のようになります。
ここで、水平方向に分解した力(赤い矢印)から分解前の力に垂線を引きます。すると、\(30^\circ\)、\(60^\circ\)、\(90^\circ\)の直角三角形ができます。
すると、辺の比が\(1:2:\sqrt{3}\)となります。
そして、今考えている直角三角形は隣の斜線部の三角形と合同ですので、辺の比も等しくなります。
よって、水平方向の分力の大きさを\(f_1\)とすると
\[F:f_1=2\sqrt{3}:2\]
という関係が成り立ちます。
これを\(f_1\)について解くと
\begin{align}
2\sqrt{3}f_1a&=2F\\
f_1&=\frac{1}{\sqrt{3}}F\\
&=\frac{\sqrt{3}}{3}F
\end{align}
となります。
もう一方の分力(青い矢印)については、分解前の力となす角が\(30^\circ\)であるので、水平方向の分力を考えたのと同様にして考えればOKです。
すると、こちらも大きさが\(\frac{\sqrt{3}}{3}F\)となります。
まとめ
今回はここまでです。
平成29年度2回目ポイント解説その2はこちらから。

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