今回は前回に引き続き中学理科のポイント解説です。
前回の記事はこちらから。

テーマは「並列回路の電圧・電流・抵抗の求め方」です。
・どう解けばよいかわからない
・並列回路は何を覚えればいいのかわからない
といった悩みがある人は必見です。
直列回路の時と同様に、まずは性質から解説していきます。

解き方を早く知りたい!
という人は、直列回路の時と同様に目次から解き方の所までジャンプして下さい。
しかし、回路が苦手な人は性質を理解できていないことが多いので最初から読んでいくことをオススメします。
並列回路とは?
まずは、並列回路とは何かについてです。
並列回路とは、抵抗が互いに接続された回路のことです。
直列回路は電流の流れる道筋を一筆書きですべてたどることができましたが、並列回路は電流が途中で枝分かれするため、一筆書きでは全ての電子部品をたどることができません。
なので並列回路の見分け方として、電流が枝分かれしている、または電流の道筋をたどったときに全ての電子部品を通ることができないときは並列回路です。
以下の図のようになります。
並列回路の性質
それでは並列回路の問題を解く時に必要となる並列回路の性質を確認していきます。
それぞれの抵抗を\(R_1\)、\(R_2\)、回路に流れる電流を\(I\)、\(R_1\)に流れる電流を\(I_1\)、\(R_2\)に流れる電流を\(I_2\)、電源の電圧を\(V\)、\(R_1\)にかかる電圧を\(V_1\)、\(R_2\)にかかる電圧を\(V_2\)とします。。
この図を元に説明していきます。
並列回路に流れる電流
まずは電流です。
並列回路に流れる電流は直列回路のようにどこも同じになりません。
上図のようにA点に電流\(I\)(赤色)が流れ込みます。
その後電流は\(I_1\)(緑色)、\(I_2\)(青色)に枝分かれします。
枝分かれした電流はB点で合流します。
このB点に流れ込む電流は、もともとA点に流れ込んだ電流\(I\)(赤色)が枝分かれしたものです。
そのため、B点で合流後流れる電流はA点に流れ込んだ\(I\)と等しいはずです。
このことから、それぞれの抵抗に流れる電流の和が回路に流れる電流になるので
I=I_1+I_2
\]
となります。
並列回路の電圧
直列回路では、それぞれの抵抗にかかる電圧の和が電源の電圧に等しくなりました。
並列回路では電源の電圧とそれぞれの抵抗にかかる電圧は等しくなります。
直列回路の時と同様に考えてみます。
こちらも山でイメージし、同じ色の導線の高さは等しいです。
では、C点からD点へ登ることを考えてみます。
今回は3つのルートがあります。
①C点(オレンジ)からD点へ一気に登る
②C点(オレンジ)からB点(青)へ行き、\(R_1\)を経由してA点(赤)行き、D点(緑)へ登る
③C点(オレンジ)からB点(青)へ行き、\(R_2\)を経由してA点(赤)行き、D点(緑)へ登る
です。
①〜③のどのルートを通っても最終的に到達する高さは同じです。
これも登った高さを電圧を使って表してみます。
電源の電圧を\(V\)、\(R_1\)にかかる電圧を電圧を\(V_1\)、\(R_2\)にかかる電圧を\(V_2\)としているので、①のルートは\(V\)だけ登り、②では\(V_1\)、③では\(V_2\)登ります。
つまり
V=V_1=V_2
\]
という関係があります。
このように、並列回路では電源の電圧をそれぞれの抵抗にかかる電圧はひとしくなります。
並列回路の合成抵抗
最後に並列回路の合成抵抗についてです。
直列回路と同様に結果をまずは示しておきます。
合成後の抵抗を\(R\)とすると、並列回路の合成抵抗は
\begin{align}
\frac{1}{R}&=\frac{1}{R_1}+\frac{1}{R_2}\\ \\
R&=\frac{R_1\times R_2}{R_1+R_2}
\end{align}
\]
となります。
なぜこのようになるのかは後ほど説明します。
並列回路の問題の解き方
並列回路の問題の解き方を説明していきます。
ポイントは前回の直列回路と同様で
・回路の性質を利用する
です。
なので、オームの法則と並列回路の電流と電圧の性質は覚えておきましょう。
それでは解き方の流れを説明し、例を用いて解説していきます。
解き方の流れ
解き方流れは
②わからないもの、求めるものを文字でおく
③各部品にオームの法則を利用
④直列回路の性質を使う
⑤解の確認
となります。
並列回路の合成抵抗
ここで、式だけ示した合成抵抗についてどのように求めるのか説明します。
解き方の流れを使って説明していきます。
電源の電圧が\(V\)[V]、回路に流れる電流が\(I\)[A]、抵抗の値が\(R_1\)[Ω]、\(R_2\)[Ω]の時、以下の回路の合成抵抗を求めてみます。
まずは「①情報の整理(何回路か、わかっているものは何か)」です。
回路をたどっていくと、途中で電流が枝分かれしています。
一筆書きで回路の全ての部品を通ることができないので、この回路は並列回路です。
わかっているものは、電源の電圧、回路に流れる電流、それぞれの抵抗の値です。
次は、「②わからないもの、求めるものを文字でおく」です。
今回わからないものは、各抵抗にかかる電圧、各抵抗に流れる電流です。
これらを文字でおきます。
\(R_1\)の抵抗にかかる電圧を\(V_1\)、流れる電流を\(I_1\)、\(R_2\)に抵抗にかかる電圧を\(V_2\)、流れる電流を\(I_2\)とします。
すると、以下の図のようになります。
(文字でおいたものは赤字になっています。)
では、次に「③オームの法則を利用」です。
それぞれの部品に対してオームの法則を立てます。
今回、抵抗が2つあるのでオームの法則も2式立てます。
オームの法則は
\[
V=RI
\]
でした。
まずは\(R_1\)の抵抗について
\[
V_1=R_1I_1\ \ \ \mbox{①}
\]
\(R_2\)の抵抗について
\[
V_2=R_2I_2\ \ \ \mbox{②}
\]
となります。
オームの法則で式を立てることができたので、次に「④並列回路の性質を使う」です。
まず、電圧については電源の電圧とそれぞれの抵抗にかかる電圧は等しいという性質があったので
\[
V=V_1=V_2
\]
です。
すると、①式、②式はそれぞれ
\[
V=R_1I_1\ \ \ \mbox{①’}
\]
\[
V=R_2I_2\ \ \ \mbox{②’}
\]
とすることができます。
電流については、それぞれの抵抗に流れる電流の和が回路に流れる電流と等しいという性質があるので
\[
I=I_1+I_2
\]
です。
①’式、②’式をそれぞれ\(I_1=\)、\(I_2=\)に変形し、\(I=I_1+I_2\)に代入します。
\[
\begin{align}
V&=R_1I_1\\ \\
I_1&=\frac{V}{R_1}\ \ \ \mbox{①”}
\end{align}
\]
\[
\begin{align}
V&=R_2I_2\\ \\
I_2&=\frac{V}{R_2}\ \ \ \mbox{②”}
\end{align}
\]
①”式、②”を\(I=I_1+I_2\)に代入して
\[
I=\frac{V}{R_1}+\frac{V}{R_2}\ \ \ \mbox{③}
\]
③式を\(V\)でくくると
\[
I=\left(\frac{1}{R_1}+\frac{1}{R_2}\right)V\ \ \ \mbox{③’}
\]
③’式を変形し
\[
\frac{1}{R_1}+\frac{1}{R_2}=\frac{I}{V}\ \ \ \mbox{③”}
\]
とします。
以下の図を見て下さい。
このように、複数ある抵抗を1個と考えたのが合成抵抗です。
合成抵抗を\(R’\)とします。
すると、オームの法則を使い\(\frac{1}{R’}\=)に直すと
\[
\begin{align}
V&=R’I\\ \\
\frac{1}{R’}&=\frac{I}{V}\ \ \ \mbox{④}
\end{align}
\]
となります。
③”式と④式の\(\frac{I}{V}\)は等しいので、③”式の右辺を④式の左辺に代入すると
\[
\frac{1}{R’}=\frac{1}{R_1}+\frac{1}{R_2}
\]
となります。
これを\(R’=\)に変形してみます。
まず、右辺を通分して足します。
\[
\begin{align}
\frac{1}{R’}&=\frac{1}{R_1}+\frac{1}{R_2}\\ \\
&=\frac{R_2}{R_1R_2}+\frac{R_1}{R_1R_2}\\ \\
&=\frac{R_1+R_2}{R_1R_2}
\end{align}
\]
となります。
\(R’=\)にするために両辺の逆数をとると
\[
R’=\frac{R_1R_2}{R_1+R_2}
\]
となり、並列抵抗の合成抵抗を求めることができました。
直列回路の合成抵抗の式と同様に、覚えてもいいのですがこのようにして導くこともできますし、使わなくても問題を解くことができます。
練習問題
それでは問題を解いて解き方の流れを確認していきましょう。
まずは「①情報の整理」です。
問題文の回路は、電流の流れる道筋が分かれていることから並列回路であることとがわかります。
そして、電源の電圧、回路に流れる電流、抵抗Aの値もわかっています。
次に「②わからないもの、求めるものを文字でおく」です。
今回わからないものは、それぞれの抵抗にかかる電圧、流れる電流、抵抗Bの値です。
これらを文字でおきます。
それぞれの抵抗Aにかかる電圧を\(V_1\)、抵抗Bにかかる電圧を\(V_2\)、抵抗Aに流れる電流を\(I_1\)、抵抗Bに流れる電流を\(I_2\)、抵抗Bの値を\(R_1\)とします。
それでは「③各部品にオームの法則を利用」です。
5.0[Ω]の抵抗についてオームの法則を利用すると
\[
V_1=5.0\times I_1\ \ \ \mbox{①}
\]
抵抗Bについてオームの法則を利用すると
\[
V_2=R_1\times I_2\ \ \ \mbox{②}
\]
式を立てたら「④並列回路の性質を使う」です。
並列回路のそれぞれの抵抗にかかる電圧は電源の電圧に等しいので
\[
V=V_1=V_2
\]
です。
よって①式、②式はそれぞれ
\[
1.5=5.0\times I_1\ \ \ \mbox{①’}
\]
\[
1.5=R_1\times I_2\ \ \ \mbox{②’}
\]
となります。
①’より
\[
\begin{align}
1.5&=5.0\times I_1\\
I_1&=\frac{1.5}{5.0}\\
&=0.30
\end{align}
\]
となります。
また、並列回路はそれぞれの抵抗に流れる電流の和が回路に流れる電流になるので
\[
I=I_1+I_2
\]
であるので、回路に流れる電流0.8[A]、先ほど求めた\(I/1=0.30[A]\)を代入して
\[
\begin{align}
0.80&=0.30+I_2\\
I_2&=0.80-0.30\\
&=0.50
\end{align}
\]
となり、抵抗Bに流れる電流は0.50[A]となります。
これを②’に代入して
\[
\begin{align}
1.5&=R_1\times0.50\\
R_1&=\frac{1.5}{0.50}\\
&=3.0
\end{align}
\]
となり、抵抗Bの値は3.0[Ω]と求まります。
最後に「⑤解の確認」をします。
求めた電流の値、抵抗の値を用いてそれぞれの抵抗にかかる電圧の値を求めてみます。
これが電源電圧と同じ1.5[V]になればOKです。
まずは抵抗Aについて、オームの法則より
\[
5.0\times0.30=1.5
\]
抵抗Bについて、オームの法則より
\[
3.0\times0.50=1.5
\]
とそれぞれ1.5[V]となりました。
よって、答えは抵抗Aに流れる電流が0.30[A]、抵抗Bに流れる電流は0.50[A]、抵抗Bの値が3.0[Ω]となります。
後は求めるものが変わったり、数値が変わるだけなので同じように計算していって下さい。
まとめ
それでは今回のまとめです。
・解き方流れ
①情報の整理(何回路か、わかっているものは何か)
②わからないもの、求めるものを文字でおく
③各部品にオームの法則を利用
④並列回路の性質を使う
⑤解の確認
という流れで回路の問題が苦手な人は解いてみて下さい。
直列回路の解き方と異なるのは④だけです。
少し長くなってしまいましたが今回はここまでです。
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