物理基礎の熱と仕事についての解説その2です。
今回は
・熱力学第一法則
について解説していきます。
内部エネルギー
前回までに物質を構成する原子や分子、イオンは熱運動をしており、運動エネルギーをもっていることを学びました。
また、粒子同士は互いに力を及ぼし合い、保存力である位置エネルギーをもっています。
この物質を構成するすべての粒子のもっている運動エネルギーと分子間にはたらく力による位置エネルギーの総和を内部エネルギーといいます。
気体の内部エネルギー
気体は分子の熱運動が固体や液体に比べ激しく、自由に空間を移動していました。

そのため、分子同士が及ぼしあう力が極めて小さくなります。
すると、先程の分子間にはたらく力による位置エネルギーも極めて小さくなります。
ここで、内部エネルギーを考えてみると
内部エネルギー = 分子の熱運動による運動エネルギー + 分子間にはたらく力による位置エネルギー
でありました。
この「分子間にはたらく力による位置エネルギー」が極めて小さいことから、内部エネルギーは気体分子の熱運動による運動エネルギーの合計と考えることができます。
気体の内部エネルギー = 気体分子の熱運動による運動エネルギー
温度は熱運動の激しさのことでしたので、温度が上昇すると熱運動が激しさが増します。
すると熱運動による運動エネルギーも増加するため、気体の内部エネルギーも増加します。
ここから、気体の内部エネルギーは温度に関連している物理量であることがわかります。
熱力学第一法則
この内部エネルギー、先程確認しましたが温度が上昇、つまり熱運動の激しさが増加すると内部エネルギーも増加しました。
ではどのようにして温度を上昇させるかというと
②外部から仕事をされる
の2つの場合があります。
このとき内部エネルギーの変化を\(\Delta U\)[J]、受け取った熱量を\(Q\)[J]、物体がされた仕事を\(W\)[J]の間に以下のような関係が成り立ちます。
というものです。
そして、この関係を熱力学第一法則といいます。
これを式で表すと
\Delta U = Q + W
\]
\(\Delta U\) : 内部エネルギーの変化
\(Q\) : 物体が受け取った熱量
\(W\) : 物体がされた仕事
となります。
ここで、気体の場合の\(Q\)、\(W\)についてもう少し補足をしておきます。
補足するのはそれぞれの符号についてです。
まずは\(Q\)についてです。
正になる場合は気体が熱を吸収する、つまり吸熱のときです。
負になる場合は気体が熱を放出する、つまり放熱のときです、
次は\(W\)についてです。
正になる場合は気体が圧縮されて体積が減少するときです。
以下の図を見て下さい。
このように、気体が圧縮されることで気体分子の運動エネルギーが増加します。
図のイメージからすると、跳ね返る気体分子が早くなることから運動エネルギーが増加します。
この時、外部から正の仕事をされているので、\(W\)の符号も正となります。
よくある説明としては、野球のバントで勢いをつけてボールを打つイメージです。
負になる場合は気体が膨張して体積が増加するときです。
以下の図を見て下さい。
このように、気体が膨張することで気体分子の運動エネルギーが減少します。
図のイメージからすると、跳ね返る気体分子が遅くなることから運動エネルギーが減少します。
この時、外部から負の仕事をされているので、\(W\)の符号は負となります。
よくある説明としては、野球のバントでバットを引いてボールの勢いを殺すイメージです。
まとめ
それでは今回のまとめです。
内部エネルギー
・内部エネルギー = 分子の熱運動による運動エネルギー + 分子間にはたらく力による位置エネルギー
・気体分子の時は分子間にはたらく力による位置エネルギーが極めて小さいため、気体分子の内部エネルギーは分子の熱運動による運動エネルギーと考えられる。
熱力学第一法則
・物体の内部エネルギーの変化\(\Delta U\)[J]は、物体が受け取った熱量\(Q\)[J]と物体がされた仕事\(W\)[J]の和に等しい
\[
\Delta U = Q + W
\]
今回は以上となります。
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