高卒認定試験数学のポイント解説です。
大問3の「2次関数」についてポイント解説をしていきます。
上の表に出題された分野を示しましたが、毎年出題されているものもあるので確実におさえておきましょう。
グラフが絡んでくる問題であるので
・グラフの式の読み方がわからない
という人は解説するポイントをおさえるようにして下さい。
2回に分けて
・解き方のポイント
を解説していきます。
今回は「2次関数のグラフの式ポイント」です。
中学3年生で学習する\(y=ax^2\)との違い
中学3年生の学習範囲で
\[
y=ax^2
\]
の2次関数を学んだかと思います。
このグラフは
・頂点が(0,0)
・\(a\)>0の時下に凸
・\(a\)<0の時上に凸
・\(a\)が大きいほどグラフの開きは狭くなる
・\(a\)が小さいほどグラフの開きは広くなる
・\(y\)軸に関して対称(この時y軸(x=0)を対称軸という)
という特徴がありました。
では、数学Ⅰではどうなるかというと、グラフが平行移動します。
・\(y\)座標が移動する
・\(x\)座標、\(y\)座標どちらも移動する
の3つのパターンをまずは確認していきましょう。
ポイントは「頂点がどこに移動するか」です。
\(x\)座標が移動する
(\(a\)と\(p\)は定数)
・頂点の座標は(0,0)から(\(p\),0)に移動する。
まずは\(y=ax^2\)の\(x\)座標が移動する場合を考えます。
頂点の\(x\)座標が移動するので、対称の軸は\(x\)=\(p\)になります。
画像のように、平行移動するだけなのでグラフの開き具合やどちらに凸かは変わりません。
これらより、移動前の\(y=ax^2\)のグラフと比較すると変わるのは頂点の座標・対称軸です。
\(y\)座標が移動する
(\(a\)と\(q\)は定数)
・頂点の座標は(0,0)から(0,\(q\))に移動する。
次は\(y=ax^2\)の\(y\)座標が移動する場合を考えます。
対称の軸は変わりません。
画像のように、平行移動するだけなのでグラフの開き具合やどちらに凸かは変わりません。
これらより、移動前の\(y=ax^2\)のグラフと比較すると変わるのは頂点の座標のみです。
\(x\)座標、\(y\)座標どちらも移動する
(\(a\)と\(q\)は定数)
・頂点の座標は(0,0)から(\(p\),\(q\))に移動する。
最後に\(x\)座標、\(y\)座標どちらも移動する場合についてです。
また、頂点の\(x\)座標が移動するので、対称の軸は\(x\)=\(p\)になります。
画像のように、平行移動するだけなのでグラフの開き具合やどちらに凸かは変わりません。
これらより、移動前の\(y=ax^2\)のグラフと比較すると変わるのは頂点の座標・対称軸です。
グラフの式が示すもの
これらのグラフの式を見たら頂点が移動したと気づけるようにしましょう。
\(y=ax^2\)を基準に頂点が(0,0)からどこに移動したかがわかればグラフの概形を描くことができます。
\(y=ax^2\)のグラフと「どちらに凸なのか」と「グラフの開き具合」は同じであるので、形はそのままで平行移動させればOKです。
また、どれだけ移動したかを
\[
y=a(x-p)^2+q
\]
に代入すれば式も求まります。
例えば、\(y=-3x^2\)のグラフが\(x\)方向に3、\(y\)軸方向に−6平行移動した時のグラフであれば\(p=3\)、\(q=-6\)であるので
\[
y=-3(x-3)^2-6
\]
となります。
また、逆に式から頂点が読み取れるようにもしましょう。
\[
y=a(x-p)^2+q
\]
で表されるグラフの式の頂点は(\(p\),\(q\))であるので
\[
y=2(x+4)^2+3
\]
という式が与えられていた場合、頂点の座標は(-4,3)と読み取れるようにしましょう。
グラフを表す式
先程の\(y=a(x-p)^2+q\)は標準形と呼ばれる2次関数の形です。
2次関数には
\[
y=ax^2+bx+c
\]
(a、b、cは定数)
で表される一般形
\(x\)軸との交点を\(\alpha\)、\(\beta\)とすると
\[
y=a(x-\alpha)(x-\beta)
\]
で表される因数分解形の合わせて3つの形があります。
一般形と因数分解形についても確認していきましょう。
一般形
y=ax^2+bx+c\ \ \ \mbox{(a、b、cは定数)}
\]
で表される2次関数を一般形というのですが、この式が与えられていた場合グラフの概形や頂点をどのように読み取ればよいでしょうか。
標準形であれば頂点の座標や概形は、ぱっと読み取れるのですが、一般形の場合ひと手間加える必要があります。
ここで、平方完成という操作を行います。
この操作は\(y=ax^2+bx+c\)を標準形の形に変形させます。
やり方を示すので手を動かしながら確認してみて下さい。
\(y=ax^2+bx+c\)の平方完成
①\(x^2\)の係数で\(x^2\)、\(x\)の係数をくくる
\[
\begin{align}
y&=ax^2+bx+c\\ \\
&=a\left(x^2+\frac{b}{a}x\right)+c
\end{align}
\]
②\((\ \ \ )^2\)の形を作る
おそらくこの②の部分が平方完成で苦戦する部分だと思います。
なので、ここは少し丁寧に進めていきます。
②では\((\ \ \ )^2\)の形を作るわけですが、どこを変形するかと言うと\(\left(x^2+\frac{b}{a}x\right)\)の部分になります。
ではどのように\((\ \ \ )^2\)の形にするかですが
\[
x^2+2ax+a^2=(x+a)^2
\]
という因数分解の式を利用します。
まず\(\left(x^2+\frac{b}{a}x\right)\)と\(x^2+2ax+a^2\)を比較してみます。
\(x^2\)の係数はどちらも1なのでこのままでOKです。
次に\(x\)の係数ですが\(\frac{b}{a}\)と2aです。
\(a\)、\(b\)はそれぞれ定数であるので、\(\frac{b}{a}\)の方を「2\(\times\)定数」の形にする必要があります。
単純に\(2\times \frac{b}{a}\)としたいところですが、これだと元の式のイコールが崩れてしまいます。
等式の性質を思い出してください。

ではどうすればよいかというと、
\[
2\times \frac{b}{2a}
\]
というように、分母にも2をかけてあげます。
すると、分数の前の2と分母の2とで約分することができ1になるので、元の式のイコールが崩れません。
1をかけても結果は変わらないためです。
最後に定数の2乗の項の部分です。
先程の定数部分である\(\frac{b}{2a}\)を2乗するので\(\left(\frac{b}{2a}\right)^2\)となります。
元の\(\left(x^2+\frac{b}{a}x\right)\)には\(\left(\frac{b}{2a}\right)^2\)がないので加えるのですが、これも先程と同様にこのまま加えてしまうと元の式のイコールが成り立たなくなってしまいます。
なので同じもので引いてあげます。
すると、その部分を計算すれば0になるので元の式のイコールは成立したままになります。
つまり
\(\left(x^2+\frac{b}{a}x\right)\)を
\[
\left\{x^2+2\times \frac{b}{2a}x+\left(\frac{b}{2a}\right)^2-\left(\frac{b}{2a}\right)^2\right\}
\]
と変形することで
\[
x^2+2ax+a^2=(x+a)^2
\]
を利用して
\[
\left\{\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2-\left(\frac{b}{2a}\right)^2\right\}
\]
と\((\ \ \ )^2\)の形に作ることができました。
③{ }を外す
\[
\begin{align}
&=a\left(x^2+\frac{b}{a}x\right)+c\\ \\
&=a\left\{\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2-\left(\frac{b}{2a}\right)^2\right\}+c
\end{align}
\]
の{ }を外します。
\[
\begin{align}
&=a\left\{\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2-\left(\frac{b}{2a}\right)^2\right\}+c\\ \\
&=a\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2-a\times \left(\frac{b}{2a}\right)^2+c
\end{align}
\]
④定数部分をまとめる
最後に定数部分をまとめます。
\[
\begin{align}
&=a\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2-a\times \left(\frac{b}{2a}\right)^2+c\\ \\
&=a\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2-a\times \frac{b^2}{4a^2}+c\\ \\
&=a\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2-\frac{b^2}{4a}+\frac{4ac}{4a}\\ \\
&=a\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2-\frac{b^2}{4a}+\frac{4ac}{4a}\\ \\
&=a\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2-\frac{b^2-4ac}{4a}\\ \\
\end{align}
\]
となります。
すると、標準形のような形に変形することができるので頂点が\(\left(-\frac{b}{2a},-\frac{b^2-4ac}{4a}\right)\)、対称軸が\(x=-\frac{b}{2a}\)として\(y=ax^2\)のグラフを平行移動したものとしてかくことができます。
因数分解形
\[
y=a(x-\alpha)(x-\beta)
\]
で表される2次関数を因数分解形といいます。
この形は頂点はわからないのですが、\(x\)軸との交点がわかります。
なお、頂点を求めるときには展開して先程のように平方完成する必要があります。
まとめ
それでは今回のまとめです。
・一般形
\[
y=ax^2+bx+c
\]
(a、b、cは定数)
頂点や対称軸を調べるには平方完成する必要がある
・標準形
\[
y=a(x-p)^2+q
\]
放物線\(y=ax^2\)を\(x\)軸方向に\(p\)、\(y\)軸方向に\(q\)だけ平行移動したグラフ
\(q=0\)の時、つまり\(x\)軸方向にのみ平行移動し場合
\[
y=a(x-p)^2
\]
\(p=0\)の時、つまり\(y\)軸方向にのみ平行移動し場合
\[
y=ax^2+q
\]
・因数分解形
\[
y=a(x-\alpha)(x-\beta)
\]
\(\alpha\)、\(\beta\)は\(x\)軸との交点
今回は数式がたくさん出てきて少し大変だったかもしれません。
次回は解き方のポイントを解説していきます。
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