今回は中学理科・物理基礎・物理における「力学」についての話です。
さらに「力学」の中でテーマを絞って、「作用反作用の法則」について話していこうと思います。
なぜこの作用反作用の法則を取り上げたかというと勘違いしている人が意外と多いからです。
大学時代にこの作用反作用の法則の理解に関する論文を目にする機会があり、中高生や大学生だけでなく教員採用試験でも誤った問題が出題されていることを知りました。
・物理基礎・物理を学習中
・高卒認定試験の物理基礎を受験予定
の方は特に確認してみて下さい。
作用反作用の法則の理解度チェック
説明に入る前に1つチェックをしておきたいと思います。
この図を見て下さい。
地面の上に物体が乗っており静止しています。
この物体にはたらく力のうち重力のみ図示しています。
ここで作用反作用の法則の理解度のチェックです。
重力の反作用を描いてみて下さい。
※物体が地面から浮いていますが、これは力を描きやすくしているためであるので地面と物体とが接していると考えて力を描いて下さい。
正しく描けたでしょうか?
正解の前によくある間違いを示しておきます。
以下の図の青色の矢印を描いてしまった人は間違いです。
青色の矢印は地面が物体を押す力です。
いわゆる垂直抗力で、これは重力の反作用ではありません。
このように間違えた人も結構いるのではないでしょうか?
間違えてしまった人は正しく理解ができていないです。
詳しい説明は後ほどします。
では正しくはどうなるかというと
このようになります。
スペースの都合上緑の矢印の作用点の位置が上過ぎるのですが、地球の中心を作用点とする「物体が地球を引く力」、これが重力の反作用です。
では、作用反作用の法則とは何か、なぜこのように間違えてしまうのかなどを説明していきます。
作用反作用の法則
まずは作用反作用の法則について確認しておきましょう。
\[
\overrightarrow{F_{12}}=-\overrightarrow{F_{21}}
\]
これが作用反作用の法則です。
作用反作用の法則はそれぞれの力の主語と目的語を入れ替えた関係にあります。
例えば、「物体1(主語)が物体2(目的語)を引っ張る」を作用とした時、反作用は主語と目的語を入れ替えるので「物体2(主語)が物体1(目的語)を引っ張る」となります。
つまり、先程の重力の反作用についても同様の関係があります。
重力とは「地球が物体を引く」力です。
(もう少し厳密に言うと、地球と物体間にはたらく万有引力と地球の自転による遠心力の合力のことをいいます。)
これの主語と目的語を入れ替えると「物体が地球を引く」力となります。
このことからよくある間違いとして示した「地面が物体を押す力」は重力と作用反作用の関係になっていないことがわかると思います。
なお、「地面が物体を押す力」と作用反作用になっているのは「物体が地面を押す力」です。
このようにして考えることで作用反作用のミスを無くすことができます。
他の間違い
他にも作用反作用の法則の間違いがいくつかあるので紹介しておきます。
・及ぼす力が異なると勘違いしてしまう
がよくあります。
ではなぜこれらの間違えがおきてしまうのか、いくつか考えを述べていきます。
なぜ、作用反作用の法則を間違えてしまうのか
原因は
・現象に惑わさられる
・名称によるもの
・重力の反作用を描く習慣がない
といったことが考えられると思います。
ではそれぞれについて説明していきます。
力のつりあいとの混同
まず、力のつりあいとの混同についてです。
重力の反作用を垂直抗力と考えてしまう人は混同をしている可能性があります。
ここで両者を混同しないポイントとして、考えている物体はなにかを意識するということです。
理解度チェックで示した図に力を全て描き込んでみます。
着目する物体毎に力を色分けしてみました。
地面の上の物体の力のつりあいを考える時は以下のようにの物体にのみ着目して式を立てます。
このように、力のつりあいは1つの物体にはたらく力についてのみ考えたときの話です。
一方、作用反作用の法則はどうかというと、それぞれの力の作用反作用の関係を見ると力がはたらいているのは別物体です。
重力と物体が地球を引く力、物体が地面を押す力と地面が物体を押す力のように、別の物体にはたらく力の話です。
この2つを混同しないように注意して下さい。
現象に惑わさられる
次に、現象に惑わさられるということです。
これは、及ぼす力が異なると勘違いしてしまうに関する話です。
よくある例なのですが、大人と子供が押し合う場面を想像して下さい。
この時、「大人が子供を押す」力と「子供が大人を押す」力を比べると、「大人が子供を押す」力の方が大きいと勘違いしてしまう人がいます。
これは間違いです。
両者の力は作用反作用の関係にあるので、大きさは等しいです。
すると、「実際には子供の方がよろけたり、動いたりするから大人の押す力の方が大きいのでは?」と思う人がいると思います。
確かに、現象をみると大人の力によって子供は動きますが、子供の力によって大人は動きません。
この理由ははたらいている力がこの他にもあるからです。
作用反作用だけに着目すると「大人が子供を押す」力と「子供が大人を押す」力は等しいです。
しかし、立っている床との摩擦力など両者が押す力以外の力によって子供が押し負けるという現象が起こります。
大人の方が力が大きそうだから押す力も大きいはず、と現象に惑わされて勘違いしないように注意して下さい。
名称によるもの
3つ目は名称によるものです。
これは作用が原因で反作用がはたらくについての話です。
作用反作用という名称からして、作用があって反作用があるように感じてしまうのもわからなくはありません。
例えば、みなさんが壁を押したとします。
これを作用とします。
すると、作用反作用の法則により反作用として壁からみなさんも押されます。
この時、みなさんが
①壁を押した
から
②壁から押し返される
と作用→反作用という順に起こると考えてしまいがちです。
しかし、実際には2つの力は同時におきています。
みなさんが壁を押す力と壁がみなさんを押す力とが同時におきるということです。
どちらを作用としてどちらを反作用とするかは、その人次第です。
これも間違いやすい部分であるので注意して下さい。
重力の反作用を描く習慣がない
最後に重力の反作用を描く習慣がないことによるものです。
これは重力についての作用反作用の話なのですが、普段問題を解く時に重力の反作用を描く人は少ない、もしくはほぼいないと思います。
力のつりあいとの混同の話と関連するのですが、最初の例をもう一度示します。
このように物体が地面などの上に静止しているときの力のつりあいを考えると
重力と物体にはたらく垂直抗力がつりあっているため物体は静止します。
向きもちょうど逆向きで力の大きさが同じなのでこの2つの力を作用反作用と勘違いしてしまうようにも思えます。
ぼく自身も描いているかと聞かれると正直なところ描いていないことの方が多いです。
これは、力を図示するときに重力の反作用もあるけど今回の問題には関係してこないから省略しておこうということで描いていません。
しかし、垂直抗力を重力の反作用と勘違いしてしまっている人は最初のうちは意識して重力の反作用まで描いておいた方がいいかと思います。
また、力を図示する際に作用反作用のペアで考えて図示する、例えば床が物体を押す力を描いたらすぐ物体が床を押す力を描くなど、作用反作用を意識して図示するのも1つの手かと思います。
まとめ
それでは今回のまとめです。
作用反作用の法則についてよくある間違いとその考えられる原因の話をしてきました。
力を正確に描いてほしいことからも今回はこのテーマを取り上げました。
運動方程式を立式するときなど力が正しく描けていないと、正しく立式することができません。
そのためにも、この作用反作用は重要な法則であるので正しく理解して下さい。
今回はここまでです。
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