前回の続きを解説していきます。
前回の記事はこちらから。

熱量、熱容量、比熱について解説してきましたが、次の内容の説明の前にもう少し補足することがあるのでまずはそちらから説明していきます。
熱容量、比熱の補足
熱容量や比熱の式について補足していきます。
それぞれの式を別の角度から見てみます。
熱容量の式が表すものの補足
まずは確認からですが、熱容量とは「物質の温度を1Kだけ上昇させるのに必要な熱量」のことであり
\[
Q=C\Delta T
\]
を用いて、熱容量\(C\)[J/K]の物体の温度を\(\Delta T\)[K]だけ変化させるのに必要な熱量\(Q\)[J]を求めることができました。
熱容量\(C\)[J/K]の物体の温度を\(\Delta T\)[K]だけ変化させるのに熱量\(Q\)[J]が必要ということは
とも考えることができます。
つまり、熱容量\(C\)の物体が熱量\(Q\)を得たことで温度変化\(\Delta T\)が起きたということです。
また、熱容量が大きいほど温まりにくいということも前回説明しました。
これについても補足しておきます。
\[
Q=C\Delta T
\]
この式を変形してみます。
まず、両辺を\(C\)で割ってみると
\[
\Delta T=\frac{Q}{C}
\]
となります。
すると熱容量が大きい、つまり分母\(C\)が大きいということです。
分数は分母が大きいほど数が小さくなるので、温度変化\(\Delta T\)も小さくなります。
このように式を読み取れると性質が理解しやすくなります。
比熱の式が表すものの補足
比熱についても、熱容量と同様に考えることができます。
まずは確認からですが、比熱とは「単位質量の物質の温度を1Kだけ上昇させるのに必要な熱量」のことであり
\[
Q=mc\Delta T
\]
を用いることで、質量\(m\)[g]、比熱\(c\)[J/(g・K)]の物体の温度を\(\Delta T\)[K]だけ上昇させるのに必要な熱量Q[J]を求めることができました。
質量\(m\)[g]、比熱\(c\)[J/(g・K)]の物体の温度を\(\Delta T\)[K]だけ変化させるのに熱量\(Q\)[J]が必要ということは
とも考えることができます。
つまり、質量\(m\)、比熱\(c\)の物体が熱量\(Q\)を得たことで温度変化\(\Delta T\)が起きたということです。
また、比熱についても値が大きいほど温まりにくいということも前回説明しました。
これについても式変形をしてみましょう。
\[
Q=mc\Delta T
\]
この式を変形してみます。
まず、両辺を\(mc\)で割ってみると
\[
\Delta T=\frac{Q}{mc}
\]
となります。
すると比熱が大きい、つまり分母\(c\)が大きくなると、分母が大きくなるということなので温度変化\(\Delta T\)が小さくなると読み取れます。
比熱と熱容量の関係
それでは、補足が終わったので次の内容に入ります。
まずは、比熱と熱容量の関係についてです。
どちらも温まりやすさを表していることが共通点です。
ここで、物体に熱量\(Q\)[J]を与え温度が\(\Delta T\)変化したことを熱容量と比熱の式とで考えてみます。
熱容量の式を使えば
\[
Q=C\Delta T
\]
比熱の式を使えば
\[
Q=mc\Delta T
\]
という関係がそれぞれありました。
式の\(Q\)と\(\Delta T\)は同じものです。
熱容量の式の\(Q\)に比熱の式を代入してみます。
すると
\[
mc\Delta T=C\Delta T
\]
となります。
そして\(\Delta T\)で両辺を割ると
mc=C
\]
つまり、比熱\(c\)に質量\(m\)をかけたものが熱容量\(C\)になるという関係があります。
さらに、両辺を質量\(m\)で割ると
\[
c=\frac{C}{m}
\]
となり、比熱は単位質量あたりの熱容量とも読み取ることができます。
整理すると
・比熱 → 単位質量あたりの温まりやすさ
です。
つまり、熱容量と比熱の違いは「質量を含めているのか、単位質量あたりで考えているのか」です。
熱量の保存
ここで、最初の例を再び考えてみましょう。
高温物体と低温物体とを接触させると、高温物体から低温物体へと熱が移動し、やがて熱平衡に達するというものでした。
この物体間での熱のやり取りに関して、まずはポイントから。
(物体間でのみ熱の移動がある場合)
物体間で熱の移動がある場合、高温物体が失った熱量は低温物体が得た熱量と等しい
それでは、説明していきます。
熱量の保存について
高温物体と低温物体が接触し、熱が移動することについてもう少し詳しく考えてみましょう。
なお、物体間以外に熱の移動はないものとして考えます。
高温物体は熱が移動したことで、つまり熱量を失ったために温度が下がっていきます。
逆に、低温物体は熱が伝わったことで、つまり熱量を得るので温度が上がっていきます。
その結果両物体の温度が等しくなり、熱平衡に達するというわけです。
このとき、高温物体から移動した熱量が低温物体へと伝わるので、物体間以外に熱の移動がなければ、高温物体が失った熱量と低温物体が得た熱量は等しいはずです。
エネルギーは勝手に消えたり生じたりしないためです。
つまり
ということです。
これを熱量の保存といいます。
グラフで表すと以下のようになります。
この熱量の保存を使うことで、2つの物体を接触させた後何℃になって熱平衡になるのかを計算することができます。
高温物体の質量を\(m_H\)、比熱を\(c_H\)、温度を\(t_H\)とし、低温物体の質量を\(m_L\)、比熱を\(c_L\)、温度を\(t_L\)、熱平衡時の温度を\(t\)とします。
さらに、物体は熱量を得た結果温度が変化するので、\(Q\)を\(Q_{in}\)とします。
まずは、低温物体についてです。
温度が\(t_L\)から\(t\)に変化するので\(\Delta T=t-t_L\)となります。
よって、必要な熱量は
\[
Q_{in}=m_L c_L (t-t_L)
\]
となります。
次に、高温物体が失った熱量ですが温度変化は\(t_H\)から\(t\)となったので\(\Delta T=t-t_H\)です。
熱量を計算するのですが、熱量の式は温度を上昇させるのに必要な熱量を求めるものでした。
すると
高温物体は温度が下がっているので使えないのでは?
と思うかもしれませんが大丈夫です。
温度変化の
\[
\Delta T=t-t_H
\]
を見て下さい。
この2つの温度の関係は\(t>t_H\)であるので、\(\Delta T\)は負の値になります。
従って
\[
Q_{in}=m_H\times c_H\times (t-t_H)
\]
の熱量\(Q_{in}\)は負の値として出てきます。\((Q_{in}<0)\)
\(-Q_{in}\)の熱量を得たということになりますが、マイナスが付いているので意味としては反対となります。
熱量を得ることの反対であるので熱量を失うということになります。
これを\(Q_{out}\)と表現するとします。
\(-Q_{in}=Q_{out}\)なので、上の式の両辺に(-1)をかけます。
すると
\[
\begin{align}
-Q&=-(m_H\times c_H\times (t-t_H))\\
Q_{out}&=m_Hc_H(t_H-t)
\end{align}
\]
となります。
\(-\)を\(t-t_H\)にかけ、\(-(t-t_H)=(t_H-t)\)となっています。
すると、熱量の保存により高温物体が失った熱量=低温物体が得た熱量であるので
\[
Q_{out}=Q_{in}
\]
です。
それぞれに式を代入すると
\[
\begin{align}
Q_{out}&=Q_{in}\\
m_Hc_H(t_H-t)&=m_Lc_L(t-t_L)\\
\end{align}
\]
となります。
\(m_H\)、\(m_L\)、\(c_H\)、\(c_L\)、\(t_H\)、\(t_L\)が与えられていれば熱平衡時の温度\(t\)を求めることができます。
この後実際に問題を解いて確認してみます。
練習問題
それでは問題をいくつか解いてみましょう。
考え方についても答えと一緒に書いておきます。
問1 熱容量が45J/Kの物体の温度を25℃から65℃に上昇させる時に必要な熱量は何Jか。
問2 質量200gの銅球を加熱し、7.6\(\times10^3\)Jの熱量を与えたところ銅球の温度が20℃から120℃に上昇した。銅の比熱は何J/(g・K)か。
問3 25℃の水が150g入った断熱容器の中に、100℃に熱した100gの鉄球を入れた。熱平衡時の温度\(t\)を求めよ。ただし、水の比熱を4.2J/(g・K)、鉄の比熱を0.45J/(g・K)とする。
まとめ
それでは、今回のまとめです。
熱量の保存
・熱のやり取りが物体間のみの場合
高温物体が失った熱量=低温物体が得た熱量
が成り立つ
教科書の問題や問題集にも取り組み、理解度を確認してみて下さい。
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