今回は高卒認定試験物理基礎の令和1年度第1回のポイント解説の続きをしていきます。
前回の記事はこちら。

大問3、大問4についてです。
大問3
大問3は仕事と力学的エネルギー、熱量、比熱について出題されました。
問1
仕事と力学絵的エネルギーついての問題です。
(1)は仕事の原理、(2)は力学的エネルギーの問題です。
(1)
仕事の原理について確認しておきましょう。
滑車やてこなどの道具を利用する時、物体を動かすのに必要な力を小さくすることができるが、動かす距離が長くなってしまうので、仕事を減らすことはできない
A、B、Cは滑車を用いたり、斜面を使って引き上げたりとしていますが、どれも結局は物体を高さ\(h\)まで引き上げています。
つまり、物体の質量を\(m\)、重力加速度を\(g\)とすると、それぞれの仕事は動かす距離は異なるもののどれも\(mgh\)となります。
よって、\(W_A=W_B=W_C\)となります。
(2)
力学的エネルギーの問題です。
物体を自由落下させるので初速度は0です。
物体の質量を\(m\)、求める速さを\(v\)とすると力学的エネルギーの保存則より
\[
mgh=\frac{1}{2}mv^2
\]
となるので、あとはこれを解けばOKです。
問2
熱量についての穴埋め問題です。
高温物体と低音物体を接触させたときのことを考えています。
この時、どちらの物体からどちらの物体に熱が移動するかというと、高温物体から低温物体へと熱が移動します。
例えば、お湯の中に氷を入れたときに、氷の熱量をお湯が奪い、お湯の温度がどんどん上がって、氷の温度がどんどん下がっていくようなことは起きませんね。
そして、接触させた両物体の温度が等しくなった状態を熱平衡といいます。
このとき、外部との熱のやり取りがなければ、一方の熱量が失う熱量ともう一方の物体が得る熱量、つまり高温物体が失った熱量と低温物体が得る熱量が等しくなるという熱量の保存が成り立ちます。
つまり、高温物体が熱量を失い、温度が下がっていき、その失った熱量を低温物体が得て、温度が上がっていくことで両物体の温度が等しくなっていくということです。
問3
比熱の問題です。
外部との熱のやりとりがないことから熱量の保存を利用して解きます。
熱量の保存とは「一方が失った熱量=もう一方が得た熱量」であるので今回の場合、「水が失った熱量=容器が得た熱量」が等しくなります。
また、比熱について確認しておきます。
・単位質量の物質の温度を1Kだけ上昇させるのに必要な熱量
・質量\(m\)[g]、比熱\(c\)[J/(g・K)]の物体の温度を\(\Delta T\)[K]だけ上昇させるのに必要な熱量\(Q\)[J]は
\[
Q=m c \Delta T
\]
と表される
最終的に温度が35℃となったので、水が60℃から35℃になるのに失った熱量\(Q_{out}\)は
\[
Q_{out}=100 \times 4.2 \times (60-35)
\]
であり、求める容器の比熱を\(c\)として容器が25℃から35℃になるのに得た熱量\(Q_{in}\)は
\[
Q_{in}=2100 \times c \times (35-25)
\]
となります。
あとは熱量の保存により\(Q_{out}=Q_{in}\)であるので\(c\)についての方程式を解けばOKです。
大問4
大問4は波の性質、縦波の横波表示、合成波、気柱の振動について出題されました。
問1
波の性質についての問題です。
波長、振動数についてそれぞれ確認しておきます。
波長は波の山から山、または谷から谷の間隔のように波1つ分の長さのことをいいます。
振動数は1秒あたりに振動する回数のことです。
では図からどのように読み取るかというと、波長については波1つ分を図示して判断します。
振動数は1波長がいくつ分あるかを数えて判断します。
問題文の正弦波の波1つ分を図示してみると以下のようになります。
横軸の位置に注目して下さい。
Aの波長を\(x_2\)、Bの波長は\(x_1\)とすると\(x_1 < x_2\)であるので波長が長いのはAの正弦波となります。
また、振動数についてはAとBの正弦波を見るとBの方が1波長分の波の数が多いことから振動数が大きのはBの正弦波となります。
問2
縦波の横波表示に関する問題です。
縦波の横波表示の仕方について確認しておきます。
図のように\(x\)軸正方向に伝わる縦波を考えます。
赤点は媒質の位置であり、緑の矢印はその変位です。
これを横波表示にする場合、青色の矢印に赤点の媒質の変位を置き換えます。
このようにして縦波を横波に変換します。
この考え方を用いて問題文の正弦波を見ていきます。
ポイントは媒質の\(x\)方向の変位を考えることです。
与えられた図は横波であるので縦波に戻してみましょう。
上図のようになります。
あとは選択肢を1つずつチェックしていきます。
①については、a点での変位は負の向きに最大です。
②については、b点ではつりあいの位置にいるので動いていません。
③については、bc点間の媒質が集まるので最も疎にはなりません。
④はについては、cd間、ed間の媒質が集まるので最も密になるのでこれが正しい記述です。
⑤については、縦波を横波表示にしたときの読み取りのポイントとして、媒質の速さが最大の点はつりあいの位置、今回でいうところのb点やd点となります。
そして、媒質の速さが0となる点は変位が最大の位置、今回でいうとa点、c点、e点となります。
よって⑤の記述は誤りとなります。
問3
合成波に関しての問題です。
波の重ね合わせの原理を利用して合成波を考えます。
まずは、それぞれの波が問題文の状況から2.0s経過した後どのような位置にいるのかを考えます。
どちらの波も2.0m/sで進行しているので、2.0s後には\(2.0\times 2.0=4.0\)[m]進みます。
そして波の重ね合わせの原理より、それぞれ波の変位を足したものが合成波となるので以下の赤線ような波形になります。
図の黒点はそれぞれの波の変位を足した点です。
このようにして、与えられた図、もしくは自分でかいた図に
②それぞれの変位を足した点
③合成波
の順に考えると合成波を考えやすくなります。
あとは適する図を選択肢から選べばOKです。
問4
気柱の振動に関する問題です。
それぞれの音の高さを比較するので、振動数がポイントとなります。
・振動数が小さい → 音が低い
であるのでA、B、Cそれぞれの振動数を求めます。
まず、A、B、C内にできる基本振動を考えると以下のようになります。
Aは開管であるので4分の1波長が1つ、B、Cは半波長が1つです。
まずはAについて。
長さ\(L\)の中に4分の1波長が1つあるので、Aの波長を\(\lambda_A\)とすると
\[
\begin{align}
L&=\frac{1}{4} \lambda_A\\ \\
\lambda_A&=4L
\end{align}
\]
となります。
そして波の基本式\(v=f \lambda\)よりAの振動数\(f_A\)は
\[
\begin{align}
v&=f_A \lambda_A\\ \\
f_A&=\frac{v}{\lambda_A}\\ \\
&=\frac{v}{4L}
\end{align}
\]
となります。
次にBについてです。
考え方はAと同様です。
長さ\(L\)の中に半波長が1つあるので、Bの波長を\(\lambda_B\)とすると
\[
\begin{align}
L&=\frac{1}{2} \lambda_B\\ \\
\lambda_B&=2L
\end{align}
\]
となります。
そして波の基本式\(v=f \lambda\)よりBの振動数\(f_B\)は
\[
\begin{align}
v&=f_B \lambda_B\\ \\
f_B&=\frac{v}{\lambda_B}\\ \\
&=\frac{v}{2L}
\end{align}
\]
となります。
最後にCについてです。
これもA、Bと同様に考えます。
長さ\(2L\)の中に半波長が1つあるので、Cの波長を\(\lambda_C\)とすると
\[
\begin{align}
2L&=\frac{1}{2} \lambda_C\\ \\
\lambda_B&=4L
\end{align}
\]
となります。
そして波の基本式\(v=f \lambda\)よりCの振動数\(f_C\)は
\[
\begin{align}
v&=f_C \lambda_C\\ \\
f_C&=\frac{v}{\lambda_C}\\ \\
&=\frac{v}{4L}
\end{align}
\]
となります。
あとはこの3つの振動数を比較すればOKです。
\(v\)、\(L\)は3つとも共通であり、AとCは同じ振動数であるので音の高さは同じになります。
ではBがA、Cと比べて高いか低いかですが、分母に着目するとBの方が分母が小さいので分数の値としては大きくなります。
つまり、Bの振動数の方が大きいということなので、音の高さもA、Cよりも高い音になります。
別解
開管の固有振動数、閉管の固有振動数の式を覚えているようであればそれぞれに代入して解いてもOKです。
以下にそれぞれ示しておきます。
・開管(開管の長さを\(l\)、音の速さを\(V\)とする)
\[
f_m = m•\frac{V}{4l}\ \ \ \mbox{(m=1,3,5,・・・)}
\]
・閉管(閉管の長さを\(l\)、音の速さを\(V\)とする)
\[
f_m = m•\frac{V}{2l}\ \ \ \mbox{(m=1,2,3,・・・)}
\]
今回の場合であれば基本振動であるので\(m=1\)です。
あとは\(l\)にそれぞれの管の長さを代入すれば求まります。
しかし、これらの式を覚えていなくても振動数を求めることができるので先程の解き方の考え方を理解しておきましょう。
まとめ
今回はここまでです。
令和1年度1回目ポイント解説その3はこちらから。

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